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運送業の法規・労働時間について知る

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長距離ドライバーの場合、実際の労働状況について事業者が正確な把握が難しく、長時間労働を強いているケースは少なくありません。その結果、労働時間の上限を守れずに、法令違反が常態化しているケースもあるのです。このページでは、労働基準法の改正によるルール変更や労働時間を正確に把握するためのポイントなどを紹介していきます。

運送業の労働時間の上限は
他の業種と異なる

「36協定」という言葉を耳にしたことありませんか?

これは法定で定められた労働時間を超えて労働させる場合に、労働者と36協定を交わし、上限の範囲内で労働時間を延長することを認めた制度のことです。運送業以外の業種に対して36協定制度は認められているのですが、運送業に関しては時間外労働の上限基準が決められていませんでした。そのため、厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準)」によって、ドライバーの労働時間について細かく制限されるようになります。

労働時間

労働時間とは休憩時間や待機時間なども合わせて、事業者に何らかの拘束を受けている時間のことです。原則として労働時間の上限は293時間で、36協定を交わした場合には1年につき6か月まで労働時間を最大で360時間まで延ばすことができます。ただし、1年間の労働時間が3516時間をオーバーすることはできません。

さらに1日の拘束時間は原則13時間が上限とされており、労働時間と労働時間との間に休憩の時間を8時間以上設けておけば、最大で16時間まで延ばすことができます。しかし、労働時間が15時間をオーバーしても良いのは、1週間に2回までです。

休息時間

ドライバー業務の休息時間とは、業務を終了し、開始するまでの時間のことです。完全に運転から離れ、ドライバーが休んでいる時間を指し、この休息時間は8時間以上継続して取らせる必要があります。

もし継続8時間以上の休息時間を取ることが難しい場合は、全勤務回数50%を限度に休息時間を拘束している時間の間や後に取らせることが可能です。ただ休息時間が1日1回あたり継続で4時間以上、かつトータル10時間以上になるように調整しなければなりません。

最大の運転時間

1日当たりの最大運転時間は、2日間の平均で9時間以内とされており、1週間では2週間の平均が44時間以内となっています。

連続運転時間

「430休憩」という言葉があり、ドライバーを連続で運転させていいのは4時間までです。4時間あたりで休憩を30分程度取らせる必要があります。もし休憩を分割して取らせる場合にも、1回の休憩は10分以上、トータルで30分以上になるように調整します。

※2024年4月からは新たな上限規制が適用されるため、「2024年問題」と呼ばれ、ドライバーの労働時間が大幅に変更されます。

2024年から変わる!働き方の新しいカタチ

2019年に労働基準法が改正されたことで、運送業を除く業種の多くが年720時間に時間外労働の上限として変更されました。運送業は、人材不足の問題や長時間労働の常態化問題などが重なっており、5年間の猶予期間が設けられていましたが、2024年より新ルールが適用。これが、いわゆる「2024年問題」と呼ばれるものです。

2024年からスタートする新ルールでは、時間外労働の上限は月に80時間、かつ年960時間とされており、法が定める労働時間と年に960時間までとなるのです。ただし他の業種と比較すると、比較的緩い改正になっており、ドライバーの人材不足問題を考慮したカタチになっています。そのため将来的には他の業種の基準に合わせるように改正される動きが出る可能性も高く、ドライバー一人当たりの負担軽減を図るための対策が必要になってくるでしょう。

そもそも運送業で過度な労働時間になって
しまう要因とは?

運転している時間だけでなく、待機の時間も長い

ドライバーの仕事は運転するだけではありません。指定された時間に到着したとしても荷下ろしの現場が混雑しているケースなどもあり、荷待ちの時間が長くなることが多々あるのです。待機しているだけだから労働時間には含まないと思っている方もいますが、いつ呼び出されるか分からない、前の車が動けば動ける状態にしている時間は、拘束されているとみなさるため、この待機時間も労働時間に含まれます。もちろんですが、待機で発生した時間が時間外労働であれば、残業代の対象となるのです。

渋滞など道路状況が変わる

道路の状況は天候や事故などによって変更し、渋滞に巻き込まれることも多々あります。たとえ高速道路を活用したとしても事故で通行止めになっているケースもあるので、予測ができないのです。さらに台風などの悪天候が分かれば、予定よりも前に出発することもあるでしょう。つまりドライバーの労働時間は、どうしても道路状況の影響を受けやすく、渋滞などに巻き込まれれば時間外労働時間も増えてしまいます。

人材不足と物流量アップ

ネットオークションなどの増加やコロナ禍による巣ごもり需要などの影響によって、物流量は急激に増加しています。さらにドライバーは長時間の労働時間を強いられるなどのブラックなイメージもあり、若い年齢層の流入が少ない職種です。その結果、シニア層のドライバーに頼る現状があり、慢性的なドライバー不足の状態になっています。シニア層に支えられている現場であっても、物流量は増えているため、配送量を減らすことはできずに、現在勤めているドライバーにしわ寄せしているのです。

運送業で労働時間の上限をオーバーする
リスクとは?

運送業において長時間労働が常態化しており、そのことによって様々なリスクを事業者は抱えています。そのリスクを回避するためにも、上限を守ってドライバーに負担をかけない働き方を提供することが重要でしょう。まずは運送業のリスクについて、きちんと把握しておいてください。

過労死のリスク

長時間労働が常態化している運送業が、実は過労死が多い職種のひとつになってしまっています。もし長時間労働が要因で過労死したと判断されれば、事業者は従業員の遺族に対し金銭補償を行わなければなりません。

政府の労災保険に加入していれば、一時金として日給加算すると1000日分程度まで支給が受けられますが、遺族が訴訟を起こせば保証金が数億円に上ることもあるのです。そうなれば経営にも影響を生じ、場合によっては大切な従業員だけでなく、会社を手放す判断をする可能性もあるわけです。

過労死のリスクを減らすためにも、厚生労働省の改善基準や過労死ラインなども参考にしてください。

  • 1ヶ月の残業時間が100時間オーバー
  • 2ヶ月連続で残業時間が80時間オーバー

厚生労働省によると、過労死が発生しやすい状況を上記のように設定しています。もちろんドライバーという環境的に過労死のラインを守ることが難しいケースもあるでしょうが、運転中に休憩を必ず取らせるなど、過労死を起こさないようにドライバーの健康を心掛けることが大切です。

ドライバーの過度な疲労によるリスク

長時間労働が続けば、どんなにベテランドライバーであっても疲労が蓄積してしまい、運転中に思わぬ事故を起こすリスクが高まります。もし長時間労働による要因と判断されれば、過労死同様に遺族から損害賠償請求され、事業者は金銭補償をする必要があるでしょう。

さらにドライバーによる事故だと、業務上過失致死傷罪などの罪に問われ、刑事責任を負う可能性もあり、運送業としてのダメージは大きくなります。

残業代未払いなどのリスク

ニュースなどでドライバーの劣悪な環境などを取り上げられる機会も多くなり、残業代の未払いや重大な時間外労働の状況が問題視されるようになっています。また運送業に関わらず、そういった事業社を「ブラック企業」として認定されてしまい、企業のイメージダウンにつながるでしょう。そうなれば新たな人材を確保できずに、深刻な人材不足に陥ってしまいます。

さらに劣悪な環境で働かされていた従業員が全日本トラック協会などに訴える可能性もあり、監査を受けることも。労働基準法・労働安全衛生法に違反したと判断されれば、行政処分に問われる可能性もあり、信用を失ってしまうリスクがあるでしょう。

少しでもブラック企業として思われず、法的なトラブルを回避するためにも、法令に則った労働環境を整備することが重要です。

運送業の労働時間を遵守するためのポイント

運送業の環境的に労働時間を正確に把握することは、非常に難しいでしょう。しかし諦めてしまえば、運送業ならではのリスクを高めてしまい、運送業経営にも悪影響を及ぼしてしまいます。万が一のトラブルを回避するためにも、従業員の労働時間を正確に把握するための仕組みを整えましょう。

労働時間を正確に把握する仕組みを構築する

そもそもドライバーが過労死ライン内で働いているかどうかを確かめるためには、実際の勤務状態を正確に事業者が把握しておかなければなりません。しかし長距離の配送などを行うことも多く、外出しているドライバーの労働時間や休憩時間などを把握することは困難です。

もちろん日報やタイムカードを活用して労働状況を把握する方法はありますが、それらの方法はドライバーの自己申告に頼っているため、ドライバーの性格によっては記入漏れや曖昧な申告になるでしょう。

少しでもドライバーの運行状況などを管理したいと思うのなら、ドラレコや労務管理システムの導入を検討するのもアリです。走行距離や位置情報などの情報を素早く把握することができ、自己申告の方法よりも正確な情報が入手できるでしょう。もちろん導入するにあたってコストはかかりますが、リスクとのバランスを考えれば、決して高すぎるものではありません。

勤怠の締め作業をオートメーションに変更

運送業にはドライバーだけでなく倉庫の作業員や事務など様々な形態で働いている従業員がおり、多様なタイムテーブルで勤務しています。そのため従業員が多くなればなるほど、勤怠の締め作業に時間を要してしまい、時間外労働のオーバーに気付くのが遅くなるケースも多いのです。気づいたときには既に遅く、労働基準法・労働安全衛生法に違反している状態になるでしょう。

勤怠の状況を管理しやすくするためにも、労働時間や休憩時間などを自動で計算してくれるシステムを導入するのもアリです。手動で計算するよりも圧倒的に時間を短縮でき、勤務状況をリアルタイムで把握できるため、違反になる前に把握し、調整できるなどのメリットがあります。

2024年問題への対応

2024年問題は早めに対策しなければ、違反になるだけでなく、従業員からの信頼を失墜させるリスクもあります。

対応が難しさの要因の一つが、異なる規制を一つの事業者が抱えているという問題です。運送業と言っても様々な職種の方が勤務しているため、ドライバー業務以外の方に対してはすでに改正された基準が適用されます。しかし、ドライバーに対しては2024年からなので、職種によっての違いに勤怠を管理するため現場は混乱することもあるでしょう。

その結果、勤怠に関するミスも増えてしまう可能性もあります。事前に2024年からはじまる規制について把握しておけば、いざという時に慌てることもないでしょう。

また残業規制が厳しくなったことで、残業代が減るという問題です。もちろん国からすると、ドライバーの安全を考慮して開始した規制ではありますが、ドライバーの中には残業代が減ることに対して不満を抱く方もいるでしょう。事前にドライバー全員に新ルールについて伝え、残業代が減る可能性について周知させることが大切です。また不満を最小限にするために福利厚生を手厚くするなどの代案も考える必要もあるでしょう。事前に不満への対策を練っていれば、何かあった時にも心構えをした状態で臨めます。

コストのアップ

つい2024年問題に注目が行きがちですが、2023年より時間外労働に対して新たなルールが設けられています。それが時間外労働の賃金アップです。これまでは時間外労働に対して25%の割増賃金でしたが、2023年より中小企業では月60時間を超えた時間外労働には50%の割増賃金が適用されます。

月に60時間以内であれば、従来通りの25%の割増賃金が適用となるため、一人のドライバーに過度な労働を強いている場合には、余計なコストがかかってしまうでしょう。もちろん一人当たりのアップ率は決して高い訳ではありませんが、多くの従業員を抱えている事業者であれば、負担は大きくなってしまいます。しっかりとコストも含めて、従業員の働き方について見直す必要があるでしょう。

労働時間の違反を行う事業者への罰則

会社として利益を追求するために、可能な限り人件費を抑えて、より多くの利益を出したいと思っているケースも数多くあります。悪質になると、ドライバーに過度な運転をさせ、無理なシフトで配送業務を行わせるのです。そうすればサービス残業が増え、企業として儲けることができる仕組みができあがります。しかし、これは完全に違法です。利益最優先で、ドライバーに正当な給与を支給していなければ、労働基準監督署による調査が行われ、違法行為だと判断すれば是氏勧告が出されるでしょう。

それでも是正監督に従わず、業務改善がないような悪質な運送業者に対しては「6か月以上の懲役または30万円以下の罰金」という罪に問われます。罪に問われてもお金を払えば大丈夫と思う事業者もいるかもしれませんが、違法行為を常態化している業者は信用できないと判断され、仕事が減る可能性、人材の流出の可能性も高くなります。結果、罰則以上のリスクを背負うことになり、運送業を営めない状態に陥ってしまうでしょう。